聖徳太子(厩戸皇子)は、推古天皇12年(604年)4月3日、「十七条憲法」を制定しました。この「憲法」は、役人の心得のような内容ですが、その第5条に訴訟を担当する者が賄賂を受け取ることを禁止することが定められています。
五に曰く、餮を絶ち欲を棄てて、明に訴訟を弁めよ。其れ百姓の訴、一日に千事あり。一日すら尚爾り、况や歳を累ねてをや。頃訟を治むる者、利を得ては常とし、賄を見ては讞すを聴く。便ち財有る者の訟は、石をもちて水に投ぐるが如く、乏しき者の訴は、水をもちて石を投ぐるに以れり。是を以ちて、貧民は所由を知らず、臣道亦於焉に闕くと。
【現代語訳】
五にいう、食を貪らず、物欲を棄てて、公明に訴訟を裁け。人民の訴えは、1日に千件ある。1日でもそうであるから、まして年を重ねると、なおさら多くなる。近頃、訴訟を裁く者は、利益を得るのが普通になり、賄賂を見てから申し立てを聞く。財ある者の訴えは、石を水に投げ込むようなもので必ず通り、貧しい者の訴えは、水を石に投げかけるようなもので、受け入れられることはない。それでは、貧しい民は、なすすべもなく、臣としての道もまた、欠けることとなろうと。
(新編日本古典文学全集「日本書紀②」小学館1996から引用)

(聖徳太子二王子像)
【チェシャ猫のひとりごと】現在の日本では、訴訟に関して賄賂を贈るなど考えられないことですが、「司法における汚職(Judicial corruption)」は古くから大きな問題であり、聖徳太子の時代にも「司法における汚職」が蔓延していたんでしょうね。現在でも汚職度の高い国では、「司法における汚職」がしばしば深刻な社会問題となっております。例えば、2012年、インドネシアにおいて、電線メーカー「オーナンバ」(大阪)の現地法人の社長が、労使紛争で裁判官に有利な判決を言い渡してもらうために2億ルピア(約170万円)の賄賂を贈った疑いで逮捕され、拘禁刑3年、罰金2億ルピアの刑に処せられました。インドネシアの弁護士に聞いてみると、同国では「司法における汚職」が深刻な問題となっており、地裁、高裁、最高裁で賄賂の金額の「相場」が異なるらしいです。 |
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